ポール・ルポールは、そのマジックは神業とさえ称されたカードマジックの名人で、特にステージのカードマニピュレーションで有名であった人です。
日本の巨匠、石田天海師とも交流のあった人で、テンカイ、カーディニらと並んで、20世紀中葉の超一流プロフェッショナルマジシャンの一人です。
ルポールの作品集としては、1949年の「Card Magic of LePaul」があり、これは主としてクロースアップのカードマジック作品集ですが、半世紀以上を経た現在でも不朽の名著として親しまれています。
この本は高木重朗氏によって1991年に「ルポールのカードマジック」として邦訳されており、当サイトではすでにこの本からジムナスティック・エーセスやAces Up!を紹介しています。
今回紹介の”The Hand Picked Aces”は、”Gymnastic Aces”に比べるとそれほど広く演じられているとは言えませんが、これもルポールらしい簡潔さと力強さのある傑作のひとつだと思います。
ルポールの「手の選んだエース」
では、動画をアップしてありますので、よろしければご覧ください。
マジックの動画はある意味いつでもそうですが、特にこのような、観客が選択する場面が出てくるマジックというのは、動画ではサマにならないものですね^^;
一応この記事は”4エースアセンブリ”のカテゴリに入れてみましたが、どうでしょうか。いわゆるTフォーメーション等で演じられるようなエース・アセンブリとは全く異なる趣ですが、これもある意味エースアセンブリの一種と見なせなくもないでしょう。
しかも、いわゆるエース・アセンブリに比べるとずっと手数が少なくシンプルな構成です。エースをデックに入れてシャッフルし、その後配られ選ばれた列から、エースが出現する。これだけです。
2グループ配るカードを2つの”山”にせず、スペードのエースから2方向に伸びる列とするやり方、そしてその配られるカードの配置にも、奇術らしい神秘的な雰囲気が感じられます。
この配置が単なる雰囲気の演出だけでなく、その直後に行われる、いわゆるエキボックを自然に行える準備となっているところも素晴らしい点です。
また、最初に3枚のエースをデックに混ぜ込むところの手法も見逃せません。
一般にカードのコントロールというのは自由度があるものですが、このマジックのこの場面では、まさにこれしかないとさえ思える、最適の手法であると感じます。
日本語版の「ルポールのカードマジック」を手に入れた、約20年前以来、この本は私の第一のお気に入りのひとつです。
この”Hand Picked Aces”は最近では演じていませんでしたが、20年ほど前には気に入ってよく演じていたものです。
どちらかというと、ショーアップされたプログラムの一部として演じるよりは、リクエストがあった場合に軽く演じるような場面に適するでしょうか。
冒頭のコントロールを別にすれば、ほとんど無技巧で演じられる、比較的簡単なマジックですので、演出にじゅうぶん力を注いで演じることが出来そうです。
ルポールの「手の選んだエース」を解説した文献等
この作品は、Paul LePaul著「Card Magic of LePaul」に解説されました。
この本は高木重朗氏の翻訳で、1991年に東京堂出版より「ルポールのカードマジック」として出版されています。現在は絶版なので、入手は多少困難となっています。
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