「ルポールのカードマジック」は、カードマジック解説書としては私が最も好きな本のひとつです。
この本の掲載作品からは、以前に即席ライジングカードを紹介しましたので、今回の”Aces Up!”で2つ目となります。
ルポールの作品の魅力は、シンプルなエフェクト、そして時に直接的で原始的とも言えるメソッドにあると思っています。
そのために用いられる手法には難易度があまり考慮されていないこともありますが、今回の”Aces Up!”について言えば、ハンドリング自体は比較的平易なものです。
が、やはり余計な動きをすべてそぎ落とし、必須の要素のみを抽出したような、ルポールらしい魅力はこの作品においても顕著です。
美術や建築の流れで言えば、合理主義のモダニズムのような精神を感じさせてくれる作品群のひとつですね。
ルポールの”Aces Up!”
動画をあげてありますので、よろしければご覧ください。
表題において「ルポールによるエレベーターカードプロット」と書きましたが、今日においていわゆるエレベーターカードの原型を確立したと思われるのはエドワード・マーローが1953年に著書「Cardician」に発表した”Penetration”という作品です。
「Card Magic of LePaul」は1949年発刊ということでマーロー作品より古く、エレベーターカードのバリエーションというよりは、その源流のひとつと考えても良さそうです。
テーブルに並べたカードを使って、順番にデック内での上昇現象を見せてゆくという構成は、まさにエレベーターカードのプロットそのものです。
マーローの”Penetration”を源流とするエレベーターカードの作品群では、主にA、2、3の3枚のカードを用いて、上昇だけでなく下降現象も取り入れることで、ハンドリングとしてはかなり合理的な構成になっています。
ただし”Penetration”ではハンドリングの辻褄を合わせた分、現象がシンプルでなくなっているという面もあります。
もちろんシンプルが絶対良いとは限りませんので、どちらが優れていると単純比較できるものでないのは言うまでもありません。
個人的にこの”Aces Up!”の良さは、エースをテーブルから拾い上げずに連続して見せる、シンプルな上昇現象にあると思います。
もちろんエレベーターカードのように、真ん中のカードを拾い上げてデックのトップに乗せたり、真ん中に差し込んだりといった動きは、それはそれで変化があって悪くないものではあります。
しかし、このルポール作品で見られる構成、テーブルに置いてあるカードにデックを乗せたらただちに現象が起こるというミニマルな感じはとてもいいですね。
まあこのへんは私の好みに過ぎないかも知れませんが。
ラスト1枚のハンドリングは、ちょっと今日的な感覚に合わない動きのような気もします。
が、いかにも荒削りで原始的な古典的手法という感じもあって、私自身はこの部分は結構好きです。
手法の原理と目的から考えると、もっと広く用いられていても良い技法である気もしますが、この手順以外で見かけた記憶はありません。
最後に余談ですが、この手順は、私が初めて母親相手にマジックを通用させることが出来た、記憶すべき作品です。
それまで何を見せても母親には何となく見破られたり、怪しさを指摘されたりし続けていたのが、この手順で初めて認めてもらえた記憶があります。
まあ認めてもらったと言っても、「あんた成功やんか!わからへんわ~」みたいな感じでしたがw
“Aces Up!”を解説した文献等
すでに冒頭でも触れましたように、この作品は彼の作品集「ルポールのカードマジック」(東京堂出版刊:高木重朗訳)に掲載されています。
しかし現在は絶版となっており、中古本を買い求めるしかないようです。
ルポールのカードマジック
アトランタ・オリンピックのデックがあるんですね?
一瞬ルポールの本の外箱デザインに似てて驚きました。
アメリカで開催されたオリンピックということで、USプレイングカード社が1996年限定で特別に製作したデックですね。
今は結構プレミアが付いて高くなっているようです。
豪華なコレクションBoxに入ったセットも持っていますが、調べてみたところそちらは国内200個限定の商品だったらしいですね。かなりレアです。
ゴールドと緑の組み合わせは、デックの話に限らず私が昔から好きな取り合わせで、このデックはその好みにどストライクなのです。
言われてみれば確かにルポール本の箱にちょっと似ています^^
まあその辺の関係を意識したわけではなくて、たまたま動画でこのデックを使ったので、記事の写真でもこのデックを入れてみたというだけです^^;