カードマジック

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「コレクターズ」デレック・ディングル “Collectors” by Derek Dingle 複数枚サンドイッチ現象のテーマ

コレクターの現象を、松田道弘氏はマルティプル・サンドイッチ・エフェクトと表現されています。
サンドイッチはカードマジックではメジャーなテーマで、2枚のカード(絵札・エース・ジョーカーなど)の間に目的のカードが出現するという現象の総称です。初心者向けの本などでは、よく使われる演出から取って探偵カードという名前が付いていることも多いです。

 

マルティプル・サンドイッチ・エフェクト、つまり複数枚のサンドイッチ現象ということで、コレクターでは2枚以上のカードの間にそれぞれカードが出現するという現象のことです。
以前の記事でポール・ハリスのインターレースト・バニッシュはコレクターの逆現象であると述べました。消失現象であるインターレースト・バニッシュと同じ構成で、コレクターでは出現が起こるということになります。

 

コレクターというテーマはイギリスのクリエイター、ロイ・ウォルトンの創案になるもので、エド・マーローを初めとした多くのマジシャンによる手順が発表されています。
今回紹介いたしますデレック・ディングルの作品は、「カードマジック事典」に掲載されていることもあり、一般の日本人マジシャンにとっては取り組みやすい位置にあるコレクター手順でしょう。

 

デレック・ディングルのコレクターズ

ではまず、動画での演技をご覧ください。

 

 

ロイ・ウォルトンの原案手順では3枚の絵札の間に2人の観客の選んだカードが出てくるというものですが、ディングルのこの手順では4枚のエースの間に3枚のカードが出現するという形になっています。
挟むカードを4枚に増やしたのは、エド・マーローの手順が最初でしょうか。
3枚の間に2枚出現が良いか、4枚の間に3枚出現が良いか、好みによるところもありますし、客観的に見ても一長一短がありそうな気がします。

 

カード当てとして演じる場合、3人の客というのはなかなか煩雑になりがちで、そういう点では2枚当てる手順のほうがすっきりして良いかもしれませんね。
しかし3枚出現というのは確かに不可能性や壮麗さという点では上位に来る気はしますし、挟むほうのカードとしてフォア・オブ・ア・カインドを使えるという据わりの良さは捨てがたいものがあります。

 

さてデレック・ディングルのこの手順の一番の見せ場は、言うまでもなくエースをデックのトップに置いた瞬間にコレクター現象が達成される部分でしょう。この部分が”一瞬で”起こる印象を最大限にすることこそが、ディングルの最大の意図かと思います。
ただしそれを達成するために、選ばれた3枚のカードをテーブルに一旦伏せて、次に4枚のエースを確認し、その後で3枚のカードをデックに戻すという、動作だけ見ると若干ややこしい手続きとなっています。

 

まあこのあたりの関係はいわゆるトレードオフと言うべきもので、エフェクト・イズ・エブリシングの考えであらゆる不自然さを取り除こうとすれば、今度はデュプリケイトやギミックに頼るということになったりもします。
ディングルのこの作品は、そういったもろもろの方法論の相克を考えれば、レギュラーデックのみで演じる手順としてはなかなかにバランスよく組み立てられた傑作であるという感じはいたします。

 

ただし練習したり演じたりする際には、そうした手続き上の煩雑さを理解したうえで、自分のキャラクターに合った形でなるべく自然に見えるように、演技のタッチを組み立ててゆく必要はあるでしょうね。
どんなマジックでも、漫然と手順を機械的に追うだけではちゃんとした演技になりませんが、この作品ではとくにそういう意識が必要な感じがします。

 

デレック・ディングルのコレクターズを解説した書籍等

今回紹介のデレック・ディングルのコレクターズは、「カードマジック事典」に掲載されています。

 

事典掲載のものは若干のアレンジが入っていますが、これの原典となるディングルのオリジナルハンドリングの手順はリチャード・カウフマン著「デレック・ディングル カードマジック」(原題:Complete Works of Derek Dingle)に掲載されています。
こちらの本には、事典のものと同じく3枚の選ばれたカードを当てる手順の他に、カード当ての形ではなく最初からマジシャンが出した3枚の絵札を使用して演じるバリエーションも解説されています。

 

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コメント

    • 峯崎浩一
    • 2013年 3月 09日 11:39pm

    Gerry Griffin というマジシャンが演じる The Collector が好きです。
    (ただこの人のオリジナルなのかは分かりませんが・・)
    現象としては観客の選んだ3枚がデックの中へバラバラに戻されたあと、
    4枚のエースがデックのトップで1枚ずつ消えてゆき、最後にスプレッドすると
    デックの中ほどから選ばれたカードを挟んで現れるというものです。

    一瞬で現れるというインパクトはないのですが、エースが観客のカードを探しに
    1枚ずつ飛行して消えていくという過程が綺麗で好んでます。

    ※ Complete Card Magic with Gerry Griffin の第5巻に収録されてます。

      • Shanla Type2
      • 2013年 3月 10日 12:23am

      エイペックス・エーセスみたいな感じでしょうか。
      そのDVD(ビデオ?)は持っていませんが、記憶にはあります。
      確か、どちらかというと初心者向け教習ビデオみたいな感じだったような印象がありますが、違いましたかね?

    • 峯崎浩一
    • 2013年 3月 10日 8:46am

    > エイペックス・エーセス
    調べてみたらその通りでした。このエースの消し方の出所が
    分からなかったので助かりました。

    Gerry Griffin のDVDには出典が明記されてないのです・・
    (それでComplete Card Magicというのもオカシイですけど)

    私はDVDは結構持ってるんですが、いいかげんな作りが多いです。
    やっぱり書籍で学ぶべきだなぁ・・と反省です。(^^;

      • Shanla Type2
      • 2013年 3月 10日 10:42am

      エイペックス・エーセス(Apex Aces)でしたら、カードマジック事典に載っていますね。
      事典の手順ではカード当てとしてのコレクターにはなっていませんが、原典である「Close-up Card Magic」にはJay Oseのバリエーションとしてカード当てコレクター手順も解説されているようです。
      Gerry Griffin氏が演じているのは、その手順ということになりそうですね。

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