名著「スターズ・オブ・マジック」より、ロス・バートラムのコインマジック作品、”Passing the Half-Backs”を紹介いたします。
ロス・バートラムはアメリカのバッファローを中心に活躍したマジシャンで、とくに洗練されたコインマジックで有名です。
スターズ・オブ・マジックには5種類の作品が解説されており、すべてコインマジックです。
この5種類の中で最も有名な作品は、コイン・アセンブリーかも知れません。
彼のコインアセンブリーは、独特の方法とマニアックなプロットが盛り込まれた傑作で、デレック・ディングル、アスカニオなど数多くのマジシャンによって改案され、演じられています。
私個人にとっては、5種類の中では今回紹介の”Passing the Half-Backs”が一番好きです。
シンプルな中にもマニアックで意外性のあるクライマックスが盛り込まれた楽しい手順だと思いますし、使われている彼オリジナルの技法も有用なものです。
“Passing the Half-Backs”の内容
“Passing the Half-Backs”は、大きく分けてコインズ・アクロスの一種になります。
コインズ・アクロスとはコインが手から手へ移動してゆくカテゴリーの総称ですが、”Passing the Half-Backs”はその中でも4枚のコインが1枚ずつ移動してゆく形式の、いわば最もオーソドックスな内容のものです。
方法論は異なりますが、以前に紹介したウイングド・シルバーなどと同系統の現象ということです。
ではまず、動画にて手順内容をご覧ください。
ご覧の通りこの作品は、コインズ・アクロスとしては少し珍しい、バックファイアーを含む手順です。
最後のバックファイアー以外は、現象的にも方法面でもとくに奇をてらうこともない、オーソドックスなものですね。
1枚目と2枚目の移動に使用されている技法は、ロス・バートラム考案のものです。
若干角度に注意は必要ですが、コインズ・アクロスに汎用的に使用できる技法としては、かなり自然で優れた技法だと思います。
私は1枚目の移動には、Paul MorrisのBottom Stealの、Geoff Lattaによるバリエーションを使用することもあります。
なお、動画の中で3枚目の移動に使っている技法は、スターズ・オブ・マジックの解説とは異なっています。
ちょっと独特な方法のClick Passのような技法が使われているのですが、ちょっと私としては感覚が掴みにくいため、通常のClick Passを使っています。
“Passing the Half-Backs”の関連作品
ターベルコース・イン・マジックの第7巻に、”The Travelers”と題したルイス・タネンによる作品が解説されており、これは”Passing the Half-Backs”とよく似ています。
この手順の第2段目ではロス・バートラムのものと同じ技法を用いています。
ただ、現象の上での相違点として、ここでは2枚目まで移動した後、その2枚が逆戻りして終わりという形となっています。現象の回数としては3回ということです。
“Passing the Half-Backs”では同じ技法を2回使いますが、”The Travelers”では1回で済みますし、また移動の回数が少ないだけスピーディーに終わりますので、今日的な感覚ではこちらのほうが演じやすいかも知れませんね。
“The Travelers”でバックファイアーに使われている技法は”Passing the Half-Backs”と類似していますが、細部で少し異なっています。
私にとってはこちらのほうがやりやすく思われるため、実際には動画の中では”The Travelers”で解説されたものに近いやり方を採っています。
クリス・ケナーのコインズ・アクロス作品”Unicoin”では、ラストの部分に”Passing the Half-Backs”のオリジナルと同じ技法を使っています。
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