二川滋夫先生はコインマジックの大家として著名ですが、非常に凝ったカードマジック作品も数多く発表されています。
今回ご紹介するカードマジック「これでもかっ!エレベーター」は、今から20年以上前に発表された作品ですが、今でも多くのマジシャンに愛用されており、二川先生の代表作のひとつとも言えるのではないでしょうか。
これでもかっ!エレベーターのプロット
そもそもの前提として、エレベーターカードという手品があります。
これは元々、エドワード・マーローの考案になるカードマジックで、一組のデックをビルに見立てて、A~3のカードが上下移動を見せるというものです。
アンビシャスカードに似た系統の現象ですが、また少し異なる独自のジャンルとして、多くのマジシャンによるバリエーションが発表されています。
今回ご紹介する「これでもかっ!エレベーター」も、それらエレベーターカードのバリエーションのひとつではありますが、この手順の主眼はむしろ別のところにあります。
どういうことか?
ではまず、「これでもかっ!エレベーター」の動画をご覧下さい。
最初にまず、A~3のカードが出現した後、普通のエレベーターカード手順が演じられるわけですが、そのまま続けて全部のカードが揃うというクライマックスは、カードマジックの現象としては大変豪華なものです。
近年は前田知洋氏がこれのバリエーションをテレビなどでも演じられているので、かなりよく知られるようになりました。
前田氏は4のカードをドリブルで出現させていますが、一応上記動画でやっているのが、4の部分については原案通りのやり方です。
カード・レベレーションとしての「これでもかっ!エレベーター」
この作品は、1991年に二川滋夫先生のマジックハウスより、この手順単体のレクチャーノートとして刊行されています。
わたしにとっては、ランディ・ウェイクマンの教材などとともに、マジック歴のかなり初期のころに購入したレクチャーノートで、一時期は気にいってよく演じていました。
が、やはり準備が少々大変なので、いつでもどこでも気軽に演じる、というわけにはいかないんですよね。
この作品は”エレベーター”という言葉が作品名称に付いていて、実際に最初の部分はエレベーター現象が演じられるのですが、すでに述べましたように、それがこの手順の本質ではない感じです。
13枚のカードが次々に出現し、そしてそれに続いてデック全部が揃うという部分の豪華さこそがこの作品の肝でしょう。
デックを目一杯シャッフルしつつ、カードが数字順に次々と出現するというマジックはいくつかあります。どちらかというとギャンブルデモンストレーション的なカテゴリの演技です。
たとえばリッキー・ジェイのこの演技とか、ベンジャミン・アール考案のこの手順とか(リンク先は本人の演技ではありません)。
この種の手順をジャンルとして表現する言い方を知りませんが、言ってみれば、シークエンシャル・レベレーションとでも言うべき現象でしょうか。
ビル・マローンの有名なサム・ザ・ベルホップも、シークエンスではありませんが、同系統の効果をベースにしています。
ギャンブリングデモンストレーションの一種にも分類されるだけあって、一般的にこの種の手順はかなり難しいのですが、そういった他の手順に比べると、「これでもかっ!エレベーター」は似たような効果を達成しつつ、技術的にはそれほどは難しくないと思います。
個人的には、あまり多くのカットやシャッフルを間に挟むよりは、最初のA~Kが出る部分までは、テンポよく一気に演じきるのが良いと思っています。
これでもか見ました。非常に面白いですね。二川さんがこのような作品を出しているなんて今日まで知りませんでした。いろいろ動画を見ましたが、どれも上手です。頑張ってください。
コメントありがとうございます。
エレベーターというよりはカードの連続出現を見せる、ギャンブリングデモンストレーションのような手順ですが、非常に豪華で面白いと思います。