ここではカードマジックの用語を紹介しますが、人名・奇術の作品名や書名などは扱わないものとしますが、ジャンル名となっているような古典的な奇術名については扱うものとします。
基本とは言えない技法についても、もれなく扱うと膨大な数となるので、著者の主観にてある程度重要と思われる技法に絞って紹介します。
アで始まる言葉
アウト・ジョグ
デックの前方に突き出すジョグ。
アードネス・ブレーク
S.W.アードネスが考案したS.W.E.シフトという技法に用いられたブレーク。他のブレークに比べて角度に強い。
アードネス・グリップ
アードネスのボトムディールに用いられたグリップ(デックの持ち方)。ボトムディールに適したグリップであることは、マジシャンにはよく知られているので、玄人相手には使いにくいかも。
アードネスのカラーチェンジ
デックの表面のカードを変化させる技法。アードネスのトランスフォーメーションという名で”Expert at the Card Table”に解説された。日本では古くから一般的に使われているカラーチェンジと思われる。
アーム・スプレッド
伸ばした腕の上にカードを広げる技法。そのままターンノーバー、そして空中キャッチという演技が行われることが多い。ステージのカードマニピュレーションの技法。
アスカニオ・スプレッド
5枚以上のパケットを4枚に見せる技法。スペインの巨匠アスカニオの考案による。カウントではなく広げてみせるので、フェアに見える。
アトファス・ムーブ
パケットをデックの上で数えて示す動作の中で、パケット内の特定のカードと、デックのトップにあるカードを入れ替える技法。
アビエイター
バイスクルやタリホーと並んで、カードマジックによく使われるトランプのブランド。
アル・ベーカー・フォース
アル・ベーカーというマジシャンによって考案されたフォース技法。単純な原理だが効果的。
アンダー・カット
基本テクニックの一種。デックの下半分を取って(カットして)上に回す。これを2回に分けて行うとダブルカットとなる。
アンビシャス・カード
観客の選んだカードがいつのまにか一組の一番上に上がってくるという現象を、複数回見せる奇術の総称。近年は日本ではとくに前田知洋やふじいあきらによるテレビでの演技でメジャーなものとなった。
イで始まる言葉
インジョグ
デックの手前側に突き出させるジョグ。
インデックス
カードの左上と右下にある小さい数字とマークのこと。ヨーロッパのカードなどでは、これが4隅にあるものもある。
インプ・パス
主にコインマジックで使われることが多いが、カードマジックでも使われる。膝の上などテーブル手前に隠された物を、ひそかにテーブル上の手にロードする技法。
インビジブル・スレッド
見えないほど細い糸。カードを浮かせたり手をふれずに動かしたりするのに使う。
インビジブル・デック
任意のどのカードでも、表向きデックの中でその1枚だけが裏向いている現象を見せるためのギャフ・デック。
この名称は、”見えないカードの中から1枚だけひっくり返してもらう”という演出によるもの。
インビジブル・パス
カードの上下を密かに入れ替える技法(パス)の一種。ハーマン・パスと同様の技法。
ウで始まる言葉
ウルトラ・ムーブ
ハリー・ロレインによって考案された技法。トップカードを密かに2枚目に移動させるテクニックで、アンビシャスカードなどに使われる。
ウルトラ・メンタル・デック
インビジブル・デックの別名。
エで始まる言葉
エイトキング・システム
一見バラバラな状態に見えて、実はあらかじめ仕込まれた特定の順番に並べる方法論をシステムという。エイトキング・システムは、このシステムの中でも最も古典的で有名なもののひとつで、数学的な規則性によらない。
エキストラ・カード
一組のトランプに元々含まれていないカードで、他から加えて使われるカードを言う。また、一組最初から入っている予備のカードを指すこともある。
エキボック
主にメンタル系の演技で使われるテクニックで、マジシャンズ・チョイスとも言う。複数の選択肢の中から、観客が自由に選んだように見えて、実はマジシャンの意図した通りに誘導するテクニック。物理的なテクニックというよりも、言葉や視線、ジェスチャーなどによる心理的なテクニック。
エスティメーション
パケットの枚数を目視で推測する技術。完全に当たらなくても奇術が成立する方法論と併用されることが多い。
エニー・カード・アット・エニー・ナンバー
イギリスのメンタリスト、David Berglasの演じた現象に端を発して世界で流行した奇術のプロブレム。観客が自由に選んだカードが、自由に選んだ枚数目から出現するというのが基本プロット。多くのバリエーションがある。
エルムズレイ・カウント
アレックス・エルムズレイによって考案されたパケットのカウント技法。4枚(あるいはそれ以上)のカードのうち1枚を隠したまま、4枚すべてを見せたように見せる技法。元々の名はゴースト・カウントと呼ばれていた。同系統のジョーダン・カウントなどと共に、パケットトリックのバックボーンとも言える重要な技法である。
オで始まる言葉
オイル・アンド・ウォーター
エドワード・マーローによって考案され、その後多くのマジシャンによってバリエーションが作られた、パケットトリックの主要なテーマのひとつ。赤と黒のカードをそれぞれ水と油に見立てて、交互に混ぜたものがいつの間にか分離する現象。逆に混ざるパターンもある。
オーディナリー・パーム
直訳すれば「普通のパーム」で、カードを手に隠し持つ技法のうちの最も基本的なもの。
オートマティック・ジョグ
ポール・ルポールによる技法で、ファンにしたデックに選ばれたカードを差込み、叩いて揃えたにもかかわらず、目印のジョグが出来ているという技法。
オーバーハンド・シャッフル
マルティプルカット形式のシャッフルのひとつで、欧米では一般によく知られているシャッフル。
オープナー
一連の手順の最初に演じる演目のこと。また、フォア・オブ・ア・カインドを取り出すマジックもこのように呼ばれることがある。(例:エース・オープナー)
オフビート
ミスディレクションと並び、マジックの演技全般で重要な要素。ひとつの演技や山場となる現象が終わり、観客の意識がひと段落して、マジシャンの使う道具やマジシャン自身から注意が逸れている状態。ミスディレクションは積極的に注意を逸らすテクニックであるのに対して、オフビートはある意味消極的な”状態”を指す。
オベット・マスター・ムーブ
フランク・ケリーのボトム・プレイスメントとも言う。デックを2つに分けて、上半分のボトムにあるカードを客に見せて、そのまま戻す動作のうちにボトムにコントロールする技法。元々はジョセフ・オベットというマジシャンが考案したのでオベット・マスター・ムーブと呼ばれたが、ターベルコースではケリー・ボトム・プレイスメントとして紹介され、その名称も定着した。
オムニ・デック
デックと同じ大きさ・厚みを持った透明アクリルブロック。カードマジックのクライマックスとして、デックがこれに変化する現象を見せる。
オーラム・サトルティ
エドワード・マーロー考案の技法。パケットの全てのカードの裏面を公明正大に見せた印象を抱かせるが、実際には半分の裏しか見えていないという技法である。オーラム”Orlam”という名称は、マーロー”Marlo”のアナグラム(文字並べ替え)。
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